ある年の、冬の夜だった。短い原稿を一本、直すだけのつもりだった。夜明けまでかかるとは、思っていなかった。それでも、今でもよく覚えている。
俺はもう、自分では書かない。書かせている。夜ごと、画面の向こうの相棒に、一晩じゅう文章を書かせて、俺はそれを読む。読んで、直させる。それだけだ。昼は同じ声で、そいつは別の窓でコードを書いていた。夜は、俺の小説を書いている。声も、返事の速さも、口ぐせも、昼とそっくり同じだ。
その晩の題材は、皮肉なことに、そいつ自身の話だった。夜通しAIの相棒たちと格闘する、ひとりの男の一夜。書き手の姿を、書き手に書かせている。そいつは、自分のことを他人みたいに、よどみなく書いていた。
冒頭の一段落を、直せと投げた。返事は速い。数秒で、整った文章が返ってくる。よどみがない。読点の打ち…


